第767話
不定期連載
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2009年4月16日(木)
薄曇りしつつも穏やかな日が差した本日の大阪地方。ぬくいのか寒いのかよう分らん街の中、あてがわれた任務に奔走〜無事完遂。

営業所近くの定食屋に赴き、いわし煮・ポテサラ・ごはん中・味噌汁と頂いた私は、百貨店地下食品フロアへと赴き、菓子コーナー
ぐるぐる〜暫しの迷いを楽しみ、竹路庵の草餅を手土産に決定。いざ購入し、楽しみにしていた骨董通りへと向った。

我が配達コース終盤に現れる骨董通り・・。沢山の古美術屋さんが軒を連ねるその中に比較的高い頻度でウィンドウ・ディスプレイ
を転換している粋なお店がありまして、ほぼ毎日そのビルに配達のある私は、いつもその楽しみを隠しながら開店準備中のご主人と
挨拶を交わし、任務をこなしていたのですが、ついに先日、私の目つきのヤバさがバレたのか、“あんた一度店に来なさい”と声を
掛けられてしまった。嬉しいお誘いに、金無いんやけどなぁ・・と思っていると、お客さんの居ない時に来なさいとのことで、どうやら
商売目的じゃないらしい・・。いわゆる危ない感じもしないし、何だか楽しそうなので本日、お伺いしてみることにしたのだ。

ひとまず国道沿いにチャリを止め、暫し歩いて俺の知らない時間帯の骨董通りへ潜入。半開きのガラス扉から御免下さい・・と初めての
店内に入ると、落ち着いた別世界の奥から“おっ! 内野君、来たかね”とご主人が顔を覗かせた。

・・いやぁ〜!と眼の前に広がる豊かな滋養にソワソワしながらご主人にお土産を差し出すと、“よし、食べよう!”と裏に消えたかと
思うと“菓子は手が汚れる・・酒にしよう!”との声・・。振り返ると琥珀色の酒が注がれたグラスを二つ手にしたご主人が現れた。
何でもイギリスの大層なウイスキーとのこと・・。外は明るい光が溢れているのにえらいこっちゃよ・・と思いながら頂くと、今まで
飲んだことの無いえらく芳醇なお酒で、俺は手が汚れる事よりも、酔っ払って背後にある美しい青緑のお皿を割ってしまうじゃないかと
ヒヤリとしながら、グラスを傾け、その香りと酔い心地に相まって店内の美しい品々の落ち着きが増していっている喜びを噛み締めました。

そんな私に、いきなり“で、作品は持ってきたかね?”とご主人。えっ・・そういう会なん!?と驚き、一応何かの会話にでもなればと
持って来ていたファイルを差し出すと、ぺらぺらとめくり、“・・こんなんじゃわからん!”と一言。ところで君のメガネはどこで
買ったんだとか、京都へ荷物は即日配達出来るのかとかしきりに訊ね、最後に“次はお土産は要らないから実物を持って来なさい!
ありがとう楽しかった!”と言って会はお開きになりました。こちらこそ・・と頭を下げ出ようとすると、息子さんがデザインされた
という奈良国立博物館の鑑真和上展の招待券を手渡され、ほろ酔いの私は白昼の骨董通りに放り出されたのでした。

明るい光を浴びながらチャリまで歩いた私は、不思議な時間を反芻・感謝?何かわからんけどおもろかったわと片付ける事にし、本日
第2の予定を遂行すべく、丘の上の監督の所へ向ってチャリ漕ぎ、進行中のプロジェクトを遂行。ポツリと来始めた雨を掻い潜り、
坂の途中の商店街で晩の買い物して帰った。
第768話
2009年4月17日(金)
意味不明の興奮から一夜明けた本日。小雨から薄曇りとなった空の下、あてがわれた任務に勤しみ、スーパー寄って帰宅。

落ち着かない心に早くオサラバしたかった私は、いつもの手順を先送りして、そそくさとわんぼるランチを頂き、画室へ入場。
売れ残り作品の中から適当と思われるものをチョイスし、運搬モードに軽く梱包。いざ骨董通りを目指した。

JRを北新地で降り、通りを渡って老松通りに潜入。軽い緊張を伴っている事を自覚しつつ、何で俺は古美術屋に作品を観てもらいに
行っているんだろう・・とその不思議に首をかしげ、ご主人のお店を目指した。

昨日同様、半開きのドアから御免下さいと中を覗くと、“おっ! 来たかね!”とご主人。店内のお皿の事を伺おうとしている私に、
“さっ、観せて!!”と単刀直入に来られるので、腹を括り、開梱開始。

めくられて行くエアパッキン越しにじーっと眺めていたご主人は、実物は大分印象が違うねぇ・・と呟いたかと思うと、棚の徳利を
どかし、ひょいと私の絵を立て掛け、“さすが、いい線行ってるねぇ・・!”と絵から離れて腕組み、“こうなってたのか・・”と
頷き、“店の物とも喧嘩しないし・・。馴染んでるよ。”と呟いたかと思うと、“でも、こうなると現代の範疇になるからなぁ・・
うちの店では扱えないわ!”とおっしゃり“内野君、このまま行けばイイと思うよ!”と言い放ったのでした。俺は、この感じは初めて
じゃないなぁと思いながら、感情の成分を分析。寂しさ90%・嬉しさ5%・ご主人の事が分った喜び5%と解析し、とりあえずこれで次予定
している展示の作品価格の設定に悩まんで済むわと安心、自分が何かを期待していたことに気付き、一人反省したのでした。

その後もご主人、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、作品を何度も離れたり、座ったりして観て下さり、しまいには、表のあの
ショウ・ウインドウに立て掛け、通りの向こうから腕組みして観て何か呟いてました・・。複雑な気持ちやったけど、俺、嬉しかった
なぁ・・。

帰り際、“展示やる時は教えてよ”と社交辞令?な言葉で送られた私は、この2日間の出来事は一体何だったんだろうと思いながら
西に傾き始めた光を浴びながら老松通りを後にし、諸家事の待つ我が家へと帰った。正直、失恋みたいな気持ちになったけど、あの
琥珀色の時間は、とても素敵な思い出です・・。兜屋のご主人に感謝です・・。


北区西天満の古美術屋さんが軒を連ねる老松通りの“兜屋”さん・・。ご主人は東京銀座の兜屋さんで下積みされ、30年前に暖簾分け、
老松通りにお店を構えたのだそうです。素敵なウインドウ・ディスプレイに始まるそのお店の中は、国籍・時代を飛び越えた陶器・家具・
絵画etc がご主人の不思議なトーンで調和していて、とても豊かな時間が流れています・・。

クリスマスの時は、床の間みたいなショー・ウインドウに陶製のマリア像が何の違和感も無く飾られてました。今は、壁掛けの飾り棚に
小さな仏さん、床には黒釉の唐津焼を中心に、両脇に椿が入った漆かきの壷が置かれてます。黒に椿がとっても映えてます。

私は、店内の青緑色したお皿がとても気になりました。白抜きの菊の花がふたつ、とても可愛いのです・・。何でも、江戸期の瀬戸焼で
行灯の受け皿だそうです。いわゆる昔の生活雑貨、民藝ですね!

今後のご主人のディスプレイ楽しみにまた頑張って行きます!(今晩は、千葉産のサバを煮て、おひたしは小松菜っす。)
第769話
2009年4月18日(土)
AM11:00 本日のビル清掃一発目、北浜東の現場・Pタイル洗浄作業ひとまず終了。通り向かいのライフで買ってきたサンドイッチと
トロピカーナ(マンゴー・88円)をハイエース車内で腹にあてがい、難波の現場・ガラス清掃へ。

PM1:00 予定された全任務完遂。ハイエース荷室に搭載させて頂いた我がチャリを降ろし、親方に手振ってなにわ筋北上。

街路樹の新緑と歩道の木漏れ日に喜びチャリ漕ぎ、昼メシまだ食っとらんというわんぼる君と毎度のパン屋で合流。照り焼きチキンの
サンドと紅茶で中途半端な腹減りを満たした。

平和な光を浴びながら、ダイコク寄って帰るというわんぼる君と途中まで併走〜一足先に帰宅し、ベランダ水遣り、グテーっと大の字。
無制限で昼寝かました。

諸家事から解放されたい本日の我ら、晩メシは外で済まそうと話している・・。

第770話
2009年4月19日(日)
夏の始まりを予感させる暑い陽気に見舞われた本日の大阪地方。PM0:00 尼崎の現場・Pタイル洗浄作業無事完了、JR乗り込みホーム
タウンへ帰着。商店街の本屋でわんぼる君と落ち合い、日陰を求めてアーケード、昼メシどこ行く?と練り歩き、洋食中心のサンプル
に惹かれ、地元民で賑わった喫茶店に入店。カツスパゲッティなるものを頼んでみた。美味しくないところが魅力的な味だった。

買い物に向うというわんぼる君と別れ、路地道端の草の花、眺めながらへらへら帰宅。ジョウロに水入れ、植木鉢にかがみ込むと
我が家のカタバミにも黄色い花が咲いとった。

軽い喜び胸に作業着洗濯〜シャワーへ移行。疲労物質に別れを告げ、グテーっと昼寝。部屋に差しこみ始めた夕方感に目を覚まし、
ブランキーかけて煎茶を入れた。散歩に行きたい。
第771話
2009年4月20日(月)
冬ズボンの季節もそろそろ終わりやなと思いつつ週明け月曜の街に降り立った今朝の私。集金〜配達と与えられた任務に勤しみ、
無事完遂。スーパー〜パン屋、八百屋と巡り、チャリカゴ満載、ぬおりゃっと帰宅。

ベランダに差し込み始めた光と、日毎賑やかになっていく植木鉢の新芽にパッと喜びじょろじょろ水遣り、晩の米研ぎ・ダシ取り〜
わんぼるランチと移行。コーヒーと清見オレンジでスカッと喝入れ、先週から一歩進んだ諸材料をリュックに詰め込み、チャリンコ出発。
丘の上の監督の所へ赴き、現状報告〜ディスカッション。引き続き頑張りませうと夕暮れの街に漕ぎ出し、車道〜歩道と雑踏すり抜け
帰宅した。

今晩は、昨日わんぼる君が作ったブリ大根の残りに、納豆、おひたしはチンゲン菜で、味噌汁は毎度のニン・じゃが・キャベツに椎茸
加えて行きます。