「帰路」

第255話
不定期連載
2007年11月21日(水)
思い通りになどなるはずも無い配達任務に少し疲れた私は、肩を落として辟易した顔でチャリを
漕いで営業所を後にした。

澄んだ空からの昼下がりの光は、町を構成する事物の境界を曖昧にする程、漕ぎ進む先の風景を
漂白していて、私の倦怠感を冷えた空気にやさしくぼかしてくれた。

今日は、いつものスーパーに加え、パン屋〜酒屋と寄らねばならず、疲れていた私は、買い物に
対して半ば、諦めモードな姿勢で店をまわった。
パン屋を出て高架下をくぐる時、斜めに射し込んだ光が路面に散った落ち葉に反射してキラキラと
光っていたのは良かった。
あいにくカメラは持ってなかったが、それはそれで清々しかった。

ディスカウントの酒屋の店内では、YUKIがかかっていて、何か知らんが、俺はやさしい気持ちになった。
2リットルペットの水と日本酒を購入し、店を出た。
手袋をするのが面倒臭かったので、そのまま帰った。ハンドルを握る手が冷たくて心地良かった。
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2007年11月22日(木)
曇天の冷え込みと様々なしわ寄せが両肩に圧し掛かり続ける毎日。
運送業務〜買い物を終えた私は、金融機関を巡り、毎月恒例の各種払い込みにまわり
生活を維持できる喜びを噛み締めた。

帰宅して、わんぼるランチを頂き、晩のサバ煮を作った。
本日はビル清掃が、心斎橋の現場で夜間作業となっているので布団敷いて、寝の体勢に入った。
4時台の薄暗い部屋での本格的な睡眠体勢は、かえってうまく眠れなかったが
ただじっとしていた私だった。
「灰色の空と私」

第256話
「勤労に感謝」

第257話
2007年11月23日(金)
AM3:00 西心斎橋のビル清掃現場、床面洗浄作業終了。
本日は、再びAM10:00から、北浜の現場にてガラス清掃が待っていたが、少々時間が
空き過ぎるので、一旦家に帰ることにした。

酔いつぶれて路上にうなだれた若者や闊歩するギャル達、暗がりのヒップホップ連中を
連なったタクシーのヘッドライトが照らし出す週末のアメ村を、俺はボロいチャリンコで
すり抜け、牛丼屋を横目に四ツ橋筋から中央大通りを曲がり暗闇を黙々と漕ぎ進んで帰った。

AM8:45 わんぼる君が用意してくれた朝食を頂き、再び作業着に袖を通し北浜へ向かった。

今日は、オフィスの喫煙室のガラスのパーテーション清掃を社員の方と8フロアまわった。
中層階から望む大阪の街は、いつになくクリアーに澄み渡っていた。
通りには、祝日のせいか人や車が見当たらず、アスファルトの路面の表示は、模型みたいな
リアリティを装い、そこにビルや信号機の影が均一な角度でスッキリと伸びていた。

我々二人は、静かに流れて行くその時間の中で作業を進めた。
透明だった光が、黄色に変わる頃、我々は最終フロアを完了した。
8フロア分の疲労を感じながらも、透き通ったガラスに達成感を感じ、地下に降りて
道具を洗った。

PM4:30 チャリンコの鍵を開け、薄暗くなった北浜を後にした。
作業着の表面からしみ込んでくる寒さが、ペダルの回転数をあげた夕暮れだった。
「コピー作業」

第258話
2007年11月24日(土)
今日は、運送屋が午後からの出勤だったので、朝メシを食い終えた私は、今年5月の展示
作品を加えた新サイズ・増補版の作品ファイル作成の為、素材をリュックに詰め込んで、
電車に乗って心斎橋のキンコーズへと向かった。

ガラス越しに見える御堂筋のイチョウ並木が美しい土曜の朝の空いた店内で、ひとしきり
コピー〜裁断と作業に勤しみ、作品が一冊にまとまる喜びを胸に店を出た。

昼メシは、シャバシャバしたものが食いたかったので、サブウェイでアボガド・べジーと
オレンジジュースを注文し、カラーコピー作業で渇いた心を潤した。

帰りにスーパーに寄って、おひたしと味噌汁用の大根葉と長ネギを買った。
(本日はわんぼる君も仕事で、昨日、手羽元のカレーを多めに作っておいてくれたのだ。)
一旦部屋に戻り、荷物を置いて、チャリンコ漕いで営業所へ向かった。
「社会生活の維持」

第259話
2007年11月25日(日)
膝が破れたジーパンを布で伏せて履いていた私だったが、わんぼる君と共に行動する時などは、
視覚的に、いい加減、迷惑を掛けている事が申し訳なく思われる領域に入ってしまったので、
ついに購入を決意し、心斎橋のユニクロへと出掛けた。

ユニクロでは、運良く“レジにて更に値引き”サービスが展開中だった。
私は、全く同型の物を2本購入し、ローテーションを組んで、ハード・ユーズに対応する事にした。
これで、また暫くは引け目を感じずに表を歩けるわ。

裾上げの完了したジーパンを受け取り、日曜の混み合った心斎橋筋商店街を掻い潜り、帰路に就いた。
今晩は、先日、静岡の方から頂いたアジの開きと、カブ菜のおひたしでいくつもりだ。
大根おろしの代わりに、カブをおろしてみようと思う。
2007年11月26日(月)
襲い来る各種シワ寄せが、私の仕事であると腹を括り、それをプライドへと転換した私は、
週明けの北区の街を集金〜配達と奔走し、買い物まで済ませ、無事、我が家へ帰還した。

わんぼるランチを頂き、ほうじ茶を飲んでから、来月のPORTRAIT展にまつわる諸作業に
掛かった。

本日は、わんぼる君のお知り合いである天満の雑貨商“TECTAIL”さんから、南船場の新店舗
開業の祝賀パーティーへのお誘いを受けていた。

PM6:00 新品のユニクロのジーパンを履き、足元をいつものアシックス・ターサーでキメて、
扉を開けると、ジョン・レノンを口ずさみながら駅へと向かったのだった。
「パーティー」

第260話