「1月末日」

第326話
不定期連載
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2008年1月31日(木)
AM6:20 東の空の薄い明るみが、心に希望をもたらしている事を感じつつ、傾いた地軸の上で公転軌道にある私は、
今日も我が営業所へと向かってチャリンコを漕いだ。確実に春は近付いていた。

気温こそ冷たいものの、明るい光が射した北区の街を集金〜配達と回り、無事任務を終えた。
スーパーでの買い物を済ませ、今日は、コーナンまで赴き、梱包で使い果たしてしまった養生テープ・布ガムテープ
と、普段の私の足元をサポートしてくれる“のびのびメッシュ5本指 カカト付ソックス”を2パック購入して帰った。
(併設の阪急ストアの店先では、イカ焼きとチヂミが労働後の空腹を刺激したが、俺は己の道だけを見据える様努めた。)

曇天になった午後の町工場通りを抜けて帰宅し、アンプリファーの電源を入れ、レッドツェッペリンをプレーヤー
に載せた。ヴォリュームを上げ、スピーカーから“胸いっぱいの愛を”のズトズトに詰まったサウンドを絞り出し
冷えと空腹でやられた精神を鼓舞させて、わんぼるランチを用意した。

集中力で消費熱量を腹におさめ、そば茶を飲んでから、晩の味噌汁の下準備までやり、玄関に立て掛けたままになって
いた段ボールシートの残りの片付け〜手荷物で持参する作品・道具等の準備をした。掃除機をかけて本日の作業を終え、
おひたしの水菜を洗った。本日は、島根産の平アジ(199円)を塩焼きにします。
2008年2月1日(金)
本日も冷え込んだ北区の街で配達業務を完了し、スーパー寄って帰宅。(結局、今日も水菜と島根産の平アジを購入した。)

制服を洗濯しながら、わんぼるランチを頂き、晩の味噌汁の下準備までやって、心斎橋の画材屋に展示に必要な品物を
買いに行った。

PM5:20 用事を終え、何となく二駅歩いた。雑踏を抜け出すと、頬に冷たい空気が心地良かった。
部屋に帰り着き、おひたしの水菜を洗ってから、会場撮影用の28ミリレンズや、作品ファイル〜帳面、着替えのパンツ・
くつした等をカバンに突っ込み、明日の出発に備えた。
「2月1日」

第327話
2008年2月2日(土)
AM8:30 JR新大阪駅 新幹線ホーム。
ジゴクペイントの二人は、いざイメージの具現化に向け、のぞみ66号に乗り込んだ。
窓の外には東寺が見えはじめ、その姿に誇りを感じて旅立つ俺だった。

AM10:15 静岡〜三島を通過。裾野に工場群を従えたドデかい富士山をデッキの窓にへばりついて拝んだ。
雲の上の頂きには雪が白く、文句無しに胸は高鳴った。

AM11:06 東京駅到着。山手線〜東上線と乗り継ぎ、ときわ台の宿に向かい、とりあえず荷物を預けた。
(中板橋の隣町、常盤台。実は大学1年の時住んでいました。今回、搬入出の都合から宿泊する事にしましたが
何とも言えない気持ちで歩いた私だった。)

身軽になった我々は、環七〜石神井川を渡り路地を抜けてrojicafeへ向かった。

久しぶりのrojicafe。スタッフの方々に挨拶し、本日までの絵本展を楽しみつつ、明日のセッティングのポイント
を確認し、そのやさしい空気の中でランチを頂きました。
(私はホワイトアスパラの天ぷら〜メダイの西京焼きの定食を、わんぼる君は卵とチーズのタイカレーを頂きました。
赤カブをポリポリ、気持ちも身体も落ち着いたところで、番茶ですっかり和みました。)

明日の段取りを確認し、昨年rojicafeさんを通じて知り合ったアーティストのいしかわ かずはるさんの展示に出掛けた。

いしかわさんの展示、プロの投げる球のスピードと美しさを目の当たりにした私は、己れを省みて会場を後にしました。
(学芸大学駅までの帰り道、わんぼる君が商店街の靴屋に出ていた2千3百円のピンクのスニーカーを愛しそうに眺めて
いたので、いつも無償で応援して下さるお礼にとプレゼントしました。)

今晩は、赤坂のボスと渋谷で待ち合わせていたので、とりあえず戻り、東口のANDOさんの工事現場(地下なので何も
見えませんでしたが・・)を歩道橋の上から眺め、心にグッとクサビを打ち込みました。

PM7:00 ボス夫妻と合流し、“駒形どぜう”(渋谷店)へと案内されました。
使い込まれたネギの桶や、小さな鉄鍋は落語の世界の様な風情で、初めて食べたドジョウの鍋は想像以上に柔らかく
葱との相性も抜群で、クイクイと酒は進み、弾む語らいの中、ボスの指揮のもと、柳川〜どじょうの味噌汁・ごはん・
漬物と移行し、江戸の食文化を楽しみました。

明日は、いよいよセッティング。私の妄想が如何程のものだったのか、結果が出ます。天気予報では雪とのこと。
まさに合格発表の前夜的な心境の私でした。
「セッティング前日の俺」

第328話
2008年2月3日(日)
AM5:30 目の冴えた私は折りたたみ傘を差し、雨混じりの雪となった常盤台、環七通りをコンビニへと歩いた。
朝食にサンドイッチ・サラダ・PONジュース、水とティーバッグと、本日の移動に備えビニール傘2本を買い求めた。

外に出ると、雨は完全に雪となり、前方の暗がりを歩くダウンジャケットの若者達は、早くも積もった雪を集めて
投げ合っていた。
玄関で雪を払い、部屋に戻り、湯を沸かした。
しばらくニュースを眺め、わんぼる君の目覚めを待った。

AM7:45 腹ごしらえを済ませ準備完了した我々は、ビニール掛けした作品を手に宿を出た。
外はすっかり雪景色で、ムギュッムギュッと一歩ずつ踏み出し、弥生町を目指した。
(石神井川を渡る時、雪の積もった欄干でユリカモメに間近で遭えたのは嬉しかった。)

AM8:00 rojicafe到着。オーナーの方が暖かく迎えて下さり、雪の朝というイベンティーな気分も相まって我々の顔も
ほころびました。
2階にお邪魔すると、昨日までの絵本展はすっかりと片付けられ、静かな音量で音楽だけが流れる部屋には、我々の到着を
待っていたかの様に先日発送した荷物が立て掛けてありました。窓の外は、ゆっくりと雪が降っていました。

昨晩は遅かったはずのオーナーの方のやさしさにグッと来つつ、時計をにらみ、早速、開梱作業開始。
まずは全ての梱包材を外しました。資材をまとめたところで、入れて下さったコーヒーを頂き、しばし談笑し、作業再開。
順にネジ釘を取り付け、壁面へと作品を掛けて行った。

AM11:00 無事セッティング〜道具の片付け・掃除、撮影まで完了しrojiの皆さんに挨拶し、我々は中板橋を後にしました。

結構な雪だったので、東京駅に直行し、構内の店で昼食をとることにした。
どこも、昼時で混みあっていたので、比較的空いていたカウンター席のみのカレースタンドに入り、野菜ごろごろビーフカレー
に温泉卵をトッピングし、野菜サラダと生ビールで乾杯した。

ビールでほろ酔いの我々は、待合を兼ねたセルフサービスのテラスに、気安く買えるドリップコーヒーと、
新設の菓子通りから選んできたフルーツが載った杏仁豆腐を持ち寄り、腰掛けました。
杏仁豆腐をスプーンで掬うと、やさしい甘さに先程までの出来事が急速に思い出となって行っている事を感じましたが、
ただ、お互いの疲れた顔を見て、笑ってコーヒーを飲みました。

PM2:30 雪の舞うホームから、のぞみ91号に乗り込み東京を後にしました。
「無事完了」

第329話
2008年2月4日(月)
東京行きでボケた身体も、週明けの配達業務と、街の気温のおかげで自分の日常を取り戻す事が出来た。
任務終え、スーパーに寄り、旅でリセットされてしまった根菜系の補充を中心に買い物して帰った。

今日は、さすがにわんぼるランチはお休みして頂いたが、外食気分にもなれなかったので、具沢山味噌汁と
冷凍ご飯で調子を整えた。そば茶を飲んで一息入れてから、晩の味噌汁の下準備〜サバ煮まで完成させ、
居間のホットカーペットの上で毛布かぶって寝た。

PM6:00 米を釜にセットしてから、洗濯物を取り込んだ。部屋に入ってから、乾いていない事に気が付いたので
ストーブの前にひろげ、味噌汁の白菜と、おひたし用の小松菜を洗った。
「日常のケア」

第330話