「雪のあるうちに」

第336話
不定期連載
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2008年2月10日(日) 結構な雪となった昨日から一夜明け、好天となった大阪地方。
我が家の裏手に続く長屋の屋根には雪が白く残っており、そのスペシャル感に煽られた我々は、ササッと身支度をして
部屋を出た。

AM8:45 JR京都駅到着。市バス一日乗車券(500円) を購入し、101番に乗車。烏丸通りを北上した。

AM9:40 雪景色の左大文字に胸を高鳴らせ、我々はバスを降りた。
参道の樹々の枝には、花のように雪が残り、そこに射す朝の光は白く眩しく、暖かだった。

山門を潜り、枝から落ちる雪解けの雫の中を歩いて行くと、光に反射して輝く真っ白な屋根となった金閣寺が現れた。

池の対岸の晴れやかな、その姿に上気しながら、私は、右から左と気が済むまで眺めた。
境内の樹々や苔はどこも真っ白な雪との兼ね合いが美しく、時折顔を見せる南天の赤い実は雪ウサギの様で可愛いかった。
夕佳亭を出たところの茶所で、塩漬けの大豆が入った和三盆の菓子と抹茶を頂き、我々は金閣寺を後にし、続いて龍安寺へと
向かった。

低い垣根が雪に影を落とす境内を歩き、石段を上った。
靴を脱ぎ、暗い庫裡を潜り抜け、方丈へ出ると、真っ白な雪が、あの石庭と塀の屋根をすっかりと覆っており、白一色となった
空間が土塀の薄茶色だけでスーッとて区切られていた。私にとっては、今まで観たことが無い、全く新しい龍安寺だった。
雪の庭の中央には、塀の向こうの、冬の装いの枝垂桜の影が落ちていた。その影は、輝く雪の上で、水色に見えた。

多くの人達と並んで縁側に腰掛け、温かい陽光を浴びながら雪と土塀、光と影を眺め続けた。
魅力の謎は解けないままだった。

雪の石庭を後にし、雪解けの雫が輝く木立ちを抜けて、池に出た我々は、ぽんぽんと雪化粧が施された山々を眺めながら
龍安寺を出た。

再びバスに乗って、烏丸今出川で下車。所々、雪ダルマが鎮座する京都御所を歩いた。梅林は、まだ、ほとんどがつぼみだったが、
微かな香りとほころびつつある花びらからは、春の兆しが感じられて嬉しかった。

(御所を抜けて、丸太町通りの交差点の和菓子屋がやっているラーメンが美味しいと、以前“トレかん”で言っていたので、
昼メシに行ってみた。鶏ガラと野菜で摂ったしょうゆ味のダシに焼いた餅と海老天・わかめが入ったラーメンに京都を感じた。
発案者の和菓子屋のおばちゃんは、この為にラーメン屋に修行に行ったらしい・・。)

わんぼる君リクエストの三条河原町の雑貨屋さんを覗いて、寺町を歩いた。錦市場で今晩のおかずに、にしんの昆布巻きと、
はくさい菜(京野菜らしい)、練り物屋でキクラゲ・ごぼう・生姜の天ぷらを買って、阪急に乗って帰った。

PM5:00 大阪に着くと、すっかり雪は無くなっていた。西日の国道沿いを錦市場の袋を提げて帰った我々だった。
2008年2月11日(月)
PM0:30 江坂の現場でのPタイル洗浄作業を終了した私は、梅田に向かった。

昼メシは、まだというわんぼる君とBOOK1stで合流し、久しぶりに、大阪のカレー・スタンドの銘店
“インデアンカレー”に行った。
(わんぼる君は卵を付けたカレーを、疲労から、酸味が欲しかった私は、ハヤシライスを頼み、二人で半分づつ
食った。久方ぶりのインデアンカレーは、やはり旨くて、付属のキャベツの酢漬けとの相性も抜群でした。
三番街の喫茶店でコーヒー飲んで、カレーを胃に馴染ませ、個性的な味を思い出に変換した。)

わんぼる君が、阪急の手芸店に寄って行くというのでお供してみた。暫し、スワロフスキーや布地を、ぼーっと眺め、
微妙なラインの可愛さや、色彩について考えるふりをした。帰りは、地元のスーパーに寄って、いつもの様に、晩と
明日のわんぼるランチの食材を買い求めた。

帰宅し、ビル清掃の作業着を洗濯し、ほうじ茶飲んでから、意を決して風呂場に向かい、散髪に取り組んだ。

PM7:00 無事、散髪〜風呂掃除まで完了し、スーパーで三枚卸し〜皮引きまでして貰って来たアジをスライスして、
わんぼる君が用意して下さった小松菜おひたし、大根・にんじん・さつま芋・こんにゃく・白菜の具沢山味噌汁と
共に頂いた。

(夕食後、玄米茶飲みながら、頭に手をやると、いつもより髪が短くて、さっき散髪したことを思い出した。)
「本日の私」

第337話
2008年2月12日(火)
そぼ降る雨で始まった連休明け・火曜日の北区の街を、配達〜集金と奔走。朝、暖かく感じた気温は、結局、一向に
上がらずいつも通り手足はかじかんだ。

無事、任務を終え、スーパーに寄り買い物を済ませ、駅の写真屋に向かった。
(頭の中に、気になる画像が堆積して来たので、店先のプリント発注マシーンと暫し対話をし、ケータイで撮った画像の
プリントを頼んできた。明日の受け取りにすると、1枚24円になるとの事だった。)

少し、スッとした気分で帰宅し、わんぼるランチを頂いてから、4匹248円で買ってきた富山産のウルメイワシを煮た。
(かなり鮮度の良い、“シュピーン”としたイワシで、煮終わってからも、部屋の蛍光灯の明かりを反射して輝いていて、
やりがいを感じた。)

味噌汁の下準備まで終え、エスキース帳を開いた。(展示中とあって、頭の中が少し混み合っていたが、ペンと色鉛筆を持つと、
その混雑の中から次の風景を少しだけ取り出すことが出来たので、若干、気が楽になった。)

PM7:25 わんぼる君帰宅の連絡を受け、炊飯を開始した。おひたしの水菜を洗うと、ビュンビュンと威勢良く伸びた水菜の茎は、
冷たい流しの水を受けて勢いを増した様で、私も嬉しかった。
「記憶の整理」

第338話
「今日の俺」

第339話
2008年2月13日(水)
頬に感じる寒さがワンランク上となった今朝の大阪地方。肺に吸い込む空気は冷たく、呼吸している事を実感しながらの
配達業務だった。途中、“聞いて無いよーッ!!”な雪が降り始め、俺は、一気にホワイトアウトして行く北区の街の中を
奔走した。(営業所への帰り道、新出入橋の高架下を潜り抜ける時、高架でフレーミングされた視界一杯の雪が、光に
透けてゆっくりと降っていて、その時だけは、冷たさでちぎれそうな指の痛みを忘れる事が出来た。)

無事、任務を終え、スーパー〜米屋と寄って帰宅した。速攻で、大根・キャベツの味噌汁を作り、わんぼるランチと共に
頂き、冷えた身体を暖めた。そば茶を飲んで落ち着いたところで、晩の味噌汁の下準備と、198円で買ってきたアラスカ産
のカラスカレイの煮付けを作った。(アラスカで鍛えられたコラーゲンが大阪の俺を助けてくれると思うよ。)

PM4:00 矯正歯科の半年に一度の検診の為、梅田へ向かった。
「今日のわたし」

第340話
2008年2月14日(木)
今日も、俺は冷えた空気を吸い込み、我が肺胞に酸素を送り込みながら北区の街を奔走した。気温は相変わらず低かったが
日の光は暖かく、少し救われた。

営業所への帰り道、西梅田の交差点で止まった俺の前には、就職活動中と思しき一組の男女がいて、
信号待ちの女子は、交差点の向こうを見据える男子の背中に、“コンっ”とおでこをぶつけ、下を向いたまま笑っていた。
その様子が切なく見えたのは、2/14という日付のせいなのか、学生時代の終わりのせいだったのかは分からなかった。

スーパーで小松菜と、二枚卸しにして貰ったサバを買って、チャリンコ漕いで帰った。
わんぼるランチを頂き、晩の味噌汁の下準備〜サバ煮まで完了させた。完成を祝してコーヒーを飲み、帳面と色鉛筆を持ち出し
てエスキースをした。