「いざ谷四へ」

第360話
不定期連載
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2008年3月5日(水)
冷たい風が吹いた本日の大阪地方。
(次々と流されて行く雲の切れ間から射し込む光は、白く鋭かったです。)

無事、任務を終え帰路に就いた。今日は、わんぼる君が休みだったので、真っ直ぐ家に帰り、ライブ版のわんぼるランチ
(鶏ムネ肉の電子レンジ酒蒸し・卵焼き・小松菜おひたし・キャベツとカブの味噌汁)を頂きました。

急激に上昇する血糖値の中、はげしい眠気に襲われながら、私は、わんぼる君に連れられ、谷四(谷町四丁目)のNHK大阪放送局
へ向かった。何でも、朝の連ドラの“ちりとてちん”の収録セットが公開されているらしいのだ。
私はドラマは3回ぐらいしか見た事が無いので、思い入れがほとんど無いのだが、話はわんぼる君から少し聞いていたし、
(“そうそう”さんの瞳と首は好きです・・。) 昨年も“芋たこなんきん”のセットを見に行って面白かったので、行ってみる
ことにしました。

会場の玄関ホールに入ると、平日の午後とはいえ、ちりとてファンで混み合っており、その切れ間から見えるセット群にはド素人の
私の胸も高鳴りました。案内に従い、列に並びいよいよ鑑賞となりました。“何で、こんな蝉が多いん?”といった謎の答えを
わんぼる君に教えて頂きながら順路を巡りました。セットといえど、居間から覗く小さな庭の緑や、板張りの縁側〜廊下を通して
入って来る光(人工光ですが‥)には感じ入るばかりでした。(“わかさ”さんと“そうそう”さんが暮らす部屋に、見てはいけない
様な生々しさを感じたのは、私が想像し過ぎなせいでしょうか‥。) そして、キム兄の居酒屋を見学。提灯〜暖簾の屋号の文字は、
キム兄直筆との案内に“ほっほ〜”とうなづきながら鑑賞しました。並んだ茶色や緑の一升瓶を見ていると焼酎が飲みたくなりました。
最後に、映像コーナーの画面に写し出される素敵な“そうそう”さんの姿を我が写真機に収め、NHKを後にしました。


帰りは難波で下車した。晩飯には少し早かったので、タワレコで時間を潰した。
(私は、LEO今井氏についての何か新しい情報を探したが、表向きには分からなかった。そういえば、アルバムのクレジットに記載
されていたDrums:Boboとの情報。まさかと思いきや、やはり54‐71のあの方だという事を先日になって知りました!)

PM6:00 財布事情もあり、商店街裏の定食屋(カウンターのみで、ショーケースからおかずを選んで来るスタイルのお店)に入り、
瓶ビール(小びん)とカレイの煮付けで乾杯した。品書きの隅に“野菜煮物あります”とあったので尋ねてみると“若ゴボウの煮付け”
なるものが出てきた。葉っぱの緑がきれいだった。納豆、ご飯、味噌汁で〆て、ちょいラッシュ気味の電車に乗って帰った。
「作業日報」

第361話
2008年3月6日(木)
出勤時、玄関のドアを開けると、東向きの空は、全面ピンク〜水色のグラデーションで、端に流れる雲はより濃い桃色を
反射していた。少し嬉しくなって、チャリンコ漕いで営業所へと向かったが、路上から見える空はすぐに白っちゃけた
オレンジになって、特に感動は無かった。

今日も北区の空気は冷たかったが、無事任務を終え、買い物済まして帰路に就いた。
急いで、キャベツの味噌汁を作り、わんぼるランチを頂いた。晩の味噌汁の下準備〜平子イワシの煮付けまで完成させて
作業に入った。

本日は、実作業を伴ったエスキース(何のこっちゃ・・)でしたので、久しぶりに作業部屋で任務にあたった。
(感受性をあまり必要としない作業だったので、結局、ZAZEN BOYZ〜ブルーハーブをかけ、その精神的なバイブレーションで
己を鼓舞させながら任務を遂行した。作業内容のせいか、今日は部屋の空気も濁らずに目標地点まで到達する事が出来た。
日が長くなって来た事も気持ちの明るさに一役買っていたと思う。)

PM7:00 諸道具を片付け、台所に向かった。ニュースをつけ、流しに置きっ放しになっていたカフェインの抽出器具を片付けて、
おひたしの小松菜を洗った。
「3/7」

第362話
2008年3月7日(金)
無事、配達任務を終え営業所に帰還すると、みんな出払っており、矢継ぎ早にかかって来る電話の対応に追われた。
己の情報処理能力の低さを感じた。限界レンジを広げるには良い経験だったと思います。えぐり込む様な空腹を抱えペダルを
漕いでスーパーへと向かった。

買い物を済ませて帰宅し、キャベツと大根の味噌汁を作って、“ミヤネ屋”を見ながらわんぼるランチを頂いた。
晩の味噌汁の下準備まで終え、昨日の作業の続きに入った。とっとと作業を進め、今日の目標地点までやって道具を片付けた。

知らない内に雨がパラついていたので、急いで洗濯物を取り込んだ。一部、半乾きの洗濯物をストーブの前に広げ、乾いたもの
から畳んで行った。何か、音楽でもをかけようかと、アンプリファーの上に積まれたCDに手を伸ばした。
わんぼる君の落語のCDが一番上にあったので、なかなか聴く事もないのでかけてみた。(桂 吉朝さんの“地獄八景亡者戯”という
CDだった。)

夕方の部屋に、太鼓と三味線、笛の音が鳴り、吉朝さんの声とお客さんの笑い声が響き始めた。洗濯物を畳みながら、その温かい
声に、時折り手を止め、耳を傾けた。俺は、何故か先日観た“ちりとてちん”の日本家屋の中庭を思い出し、この部屋が郷愁とも
何とも言えない様な感情に包まれていることを感じた。(演目が、生き死になだけに余計にそう感じたのだろうか。)
大変長い落語で、洗濯物たたみ終了後も流れ続けたので、晩の味噌汁に入れようと買ってきた8匹298円のハタハタの内臓を取りながら
も聴いた。結局、味噌を溶かすだけの状態までハタハタを煮終えた頃に“地獄八景亡者戯”はあっけなく終わった。

静かになってしまった部屋で、おひたし用のカブ菜を洗い、納豆をかきまぜた。
「3/8」

第363話
2008年3月8日(土)
中央区北浜 PM2:00 
無事、本日のビル清掃任務を終えた私は、明るい地上に心を解き放ち、チャリンコのスタンドをあげた。
本日は、わんぼる君も出勤の為、買い物の任務がまだ残ってはいたが、とりあえず精神の開放を祝して、立ち読みに向かった。

書店のフロアを一通りまわると、足に疲労を感じ始めたので、そろそろ行かねばと決心し再びチャリンコ漕いでスーパーへ赴いた。
まだ西日と呼ぶにはフレッシュさが残る午後の光が、西梅田の街を明るく照らしていた。
(途中、街路樹の枝が逆光を受けてキラキラと輝いていて、春を待つ蕾かな?と思い、よく見ると発光ダイオードの電球だった。)

330円の和歌山産の丸アジと、おひたし用にチンゲン菜を買って帰り、ベランダの植木に水をやってからコーヒーを入れた。
米研ぎ〜汁の準備までやって、少しだけ作業の続きをした。今日はアジを焼くつもりです。
2008年3月9日(日)
豊中市・照明器具清掃現場 駐車場ハイエース車内休憩 AM9:00

微糖の缶コーヒー120円が口の中に残した甘ったるさに若干の後悔を感じつつ、社員の方から今月の予定を伺っていると、
FMラジオからYUKIが流れ始めた。疲労気味の我々の声が、冗談混じりの明るさに変わったのは、スピーカーから響くその
キュートな歌声のせいだったと俺は思うよ。窓の外を見ると、駐車場の隅に置かれたブルーシートに、朝の光を受けてきらめく
桜の樹の影がくっきりと映っていた。


PM3:00 首筋の痛みと引き換えに全工程無事に終了し、俺達は、暖かい風に吹かれながら坂道を下って帰った。
民家の塀からは満開の梅がのぞき、坂の下では、不動産業者が、親御さんと歩く阪大の新入学生相手に営業活動を展開していた。
華やいだその雰囲気に確実に春が巡って来ていることを感じた。

西日に照らされた梅田行きのホームに立った俺達は、オレンジ色の光の向こうからやって来た急行電車に乗り込み帰路に就いた。
「気が付けば春」

第364話