「今日の私」

第383話
不定期連載
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2008年3月28日(金)
ここ大阪でも桜が咲き始め、花粉の方もだいぶマシになって来た今日この頃。(本日は薬を飲まずに配達に臨んだ。)
年度末の週末とあってか荷物の量も多く、今日はなかなかテンテコマイな配達業務となった。

任務の完了と引き換えに、えぐり込む様な空腹を手に入れた私は落ち窪んだ瞳でスーパーへ向かった。
途中、公園の横を通ると、まだかたそうな桜の花びらが白く光に透けていた。

無事部屋に帰り着き、持ち帰って来た制服を洗濯しながら、キャベツの味噌汁を作った。(今日は疲労回復を願って味噌を
濃い目にした。) とりあえず濯ぎ〜脱水までやって、テレビのチャンネルを変えながらわんぼるランチを頂いた。
(結局、教育番組の高校講座・科学をフムフムと見ながらカッ食らった。)

晩の味噌汁の下準備〜洗濯物干しまで終えた私は、軍手を尻ポケットに突っ込み、材木屋に赴き、昨日の角材を引き取って来た。
角材を画室の隅に片付け、昨日エスキースから割り出した寸法にベニヤ板を裁断し、今日の業務は終了とした。
(エスキース段階での構想が実寸になって現れると若干のとまどいを感じたが、己の当初の考えを信じて、まずは完成まで取り
組んでみようと思う。)

今晩は、2匹398円で買ってきた三重産の丸アジを焼いて、おひたしはチンゲン菜(99円!)で行きます。
「国立国際美術館に行きました」

第384話
2008年3月29日(土)
薄ら寒い朝の道を北浜へ向かってチャリンコ漕ぎ出した私は、公園の桜の下を通過しようとしたが、やはり気になってペダルを
止めて見上げた。パパッと開いたうすピンクの花びらが、風も吹いてないのに枝ごとビュンビュンと揺れていて、見ると
たくさんのメジロが思い思いに花びらを突っついていた。かわいいなぁ・・とひとり笑みを浮かべ、昇り来る朝日に向かって、
再びペダルを踏み込んだ。

AM11:30 無事、Pタイル〜外階段洗浄作業を終え、ヘラヘラとチャリンコ漕いで北浜を後にした。
思いの他、早く終わったので、中之島でわんぼる君と落ち合い、国立国際美術館で開催中のアボリジニの方の展示を観に行く事に
した。(ありがたい事に頂き物の招待券があったのです。)

まずは、美術館近くのリアルな喫茶店で昼メシにした。(どうやら中之島のサラリーマンのランチで鍛えられた店らしく、かなり
パンチの効いたメニューばかりで、私は“ジャンボチキンカツカレースパゲッティ(700円)”を、わんぼる君はオムライス(600円)を
注文した。どちらも見ただけで満腹になりそうな量で労働後の私には最適だった。全部食べきれんというわんぼる君の分まで無事
食い上げ、コーヒーで消化を助けたかったが、店内は土曜出勤の会社員や、現場作業員、休日を過ごすカップルとで混み合っており
慌しかったので、移動して肥後橋の喫茶店で休んだ。)

腹も落ち着き、いざ国立国際へ向かった。エスカレーターを降り、ロッカーにリュックを入れようかとキョロキョロしていると
どこかで見たことある様な人に呼び止められた。はて、知ってる様な、でもこんなとこにおる訳無い様な・・と記憶を辿っていると
学生時代の学科は違っていたが同級生だった。何でも、出張で来阪中との事だった。学生時代と変わらぬ眼差しに嬉しさを感じた。
聞けば、現在美術館の学芸員をしているとの事。そうか、夢をかなえたのか!と感慨深かった。

関西のおすすめを尋ねられたが、即座に頭に浮かんだのが、智積院の長谷川等伯氏と狭山池のANDOさんの建築だった。
日帰りで無理とのことだった。高森さん(ギャラリーゼロさん)は、たしかアートフェアの準備中やろうしなぁ・・。俺あんまり
知らんしなぁと考えながら脇をみると、ミュージアムショップの店先にアートを特集していた関西の情報誌“エルマガジン”が
積まれていたのでこれ見たらええよと薦めた。
我がパートナーわんぼる君を紹介し、名刺を頂いた。私は、同じ暗がりを歩む同志に、むすこを握った絵をあしらった名刺を渡し
たかったが、あいにく持ち合わせておらず、リュックのポケットに残っていた先日の展示のDMを渡し、私の卒業後の動向が赤裸々に
綴られた恥知らずな当HPの存在を伝えた。何ら違和感無く別れたが、考えてみれば、学生時代なんて、もう十年以上前の話であった。
何とも言えない気持ちになって、エスカレータを降り、“アボリジニが生んだ天才画家 エミリー・ウングワレー展”会場へ入った。

エミリー・ウングワレー展、とても良かったです。美術館の枠に入りきらない豊かさを感じました。気持ちの良い心意気が広がって
いて新鮮でした。美術の世界に連れて来て下さった方のおかげで大阪に暮らす私なんかが観れたのだと思います。世界中、みんな
美を渇望しているんだと改めて感じた。 最後に映像コーナーのエミリーさんのVTRを観ました。バックに流れるエミリーさんの歌(?)
に祖母が唄っていた民謡を思い出しました。ハガキ買って思い出の印とし、我々は会場を後にしました。
「3/30 雨」

第385話
2008年3月30日(日)
AM11:00 江坂の現場でのPタイル洗浄作業を無事に終え、私はパラパラと降り始めた雨の中を駅へと歩いた。
時間も早いし、せっかく江坂まで来ているので西口の布地屋に寄ってみた。店内を適当にうろついていると、男気溢れる
可愛い布地を見つけた。出会いに感謝し喜んで購入し、梅田へと帰った。

買い物に出て来ていたわんぼる君と丸ビルのタワーレコードで落ち合い、ACTYのラーメン屋に行って、野菜が一杯入った
ラーメンを食った。日曜の昼とあって混んでいたが、店員さんが丁寧で美味しさ倍増だった。

ジュンク堂でひとしきり立ち読みして、堂島の喫茶店で休んだ。(私は、アップルティーを頼んだ。英国旗があしらわれた
マグカップで出てきて、その香りに私は温泉気分だった。)

紅茶の精神安定作用が効き過ぎたのか、深い安堵に包まれた私は、急激な眠気に襲われながら帰路についた。
そのやる気の無さのせいか晩の買い物を免除された私は、そぼ降る雨の中、一人、とぼとぼと歩いて帰った。途中の公園の土の
上には、まだ5分も咲いてない桜が、そのくっきりとした造形を保ったまま、早くも雨に打たれて雑草の緑の上に散っていた。
それはそれできれいだった。

部屋に戻り、少し寝た。笑点の音に、ぐぉっと起き上がり、小さな音でフィッシュマンズ聴きながら角材とベニヤを接着し、
キャンバスを作った。
「月末の俺」

第386話
2008年3月31日(月)
昨日からの雨も早くに止み、冷たい風が吹いた本日の大阪地方。先週に引き続き、今日も何やかんやと忙しく、絶えず時間に
追い立てられながら何とか任務を完了した。

午後からはビル清掃で、堺筋本町の現場の応援となっていたので、いつもの定食屋で昼メシにした。
今日はあまりおかずが残ってなく、結局、イカ天・ポテトサラダ・わかめ酢・ごはん大・味噌汁を選び、テレビを見るでもなく
ひたすらカッ食らった。空腹を満たした私は強さが増した冷たい風の中、なにくそとチャリンコ漕いで現場へ向かった。

PM5:40 思いのほか早く作業終了となり地下の控え室から這い上がった私は、夕空に疲労を解き放ち、チャリンコの鍵を開けた。
オフィースの呪縛から解放された人々の群れを掻い潜り、ビルディングの壁面に乱反射する橙色を追いかけてペダルを漕ぎ続けた。
中之島から真西に伸びた国道に出ると、そのオレンジの正体がカッと現れ、夕暮れのアスファルトに朱色のラインを伸ばしていた。
そのラインは桃色に強まりながら、本日の作業を終了した工事現場前の水が撒かれた歩道にまでキラキラと映り込んでいた。

部屋に帰りついた私は、夕日で気化された残り少ない本日のエネルギーに、名古屋の若旦那が放つ強力なラップミュージックで
火を点け、作業着をザバァッと洗濯し、昨日接着まで終えたパネルの仕上げをした。
今晩は、ありがたい事にわんぼる君がイワシの煮付けと味噌汁の下準備までやって下さっていたので、私の任務は小松菜を茹でる
だけである。感謝!
「新年度の私」

第387話
2008年4月1日(火)
四月一日を迎えた北区の街を本日もタイムトライアルの如く奔走し、どうにかこうにか任務を終えた私は、へろへろとペダルを漕いで
スーパーへ向かった。

花冷えというには、冷え過ぎな近頃の大阪地方、桜は少しずつ開花してはいるようだが、枝には依然として雛あられの様なつぼみが
まびり付いていた。(今晩は、わんぼる君が会議で遅くなる為、一人メシとなる私は、怠慢に恒例の味噌汁作戦で行く事にし、3匹
120円の平子イワシを買って帰った。)

無事、部屋に帰り着き、キャベツの味噌汁を作り、ミヤネ屋が伝える各企業の入社式の様子を眺めながら、わんぼるランチに喰らい
ついた。ほうじ茶飲んで、よっこらせと立ち上がり、晩の味噌汁の下準備まで済ませて作業に入った。

目標のキャンバス張り〜下地の一発目まで完了し、ニュースをつけて道具を片付けた。
とっておいたダシ汁を火に掛け、いたいけな表情のイワシの首根っこに包丁を入れ内臓をとった。
鍋に酒とショウガを加えてイワシを煮ていると、何故か、チャラが聴きたくなった。棚から引っ張り出してきた10年前のCDが
スピーカーから流れ始め、そのやさしく独特な歌声に一層の孤独感を煽られた私は、気持ち悪さを自覚しつつもエアボーカルで
リンクし、鍋にキャベツを入れ、ネギを刻んで味噌をすくった。