「本日の流れ」

第388話
不定期連載
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2008年4月2日(水)
新年度となり、今まで以上にタイムトライアル感が増した我が運送業務を、本日も何とか無事に完了し、営業所を後にした。

ペダルを漕ぐ私の脳みそは、悔しくも疲労に支配され始めていたが、様々な感情を伴いながら、掻き分けて行く目の前の風景が、
自分にとって、猿真似では無い確かなリアリィティを持ったものになって行く喜びは、何物にも替え難いものがあった。

スーパーでの買い物を終え、部屋に帰り、味噌汁を作った。感謝と共にわんぼるランチを頂き、テレビから流れ始めたみんなの歌
を聴きながら、ほうじ茶をすすり、立ち上がった。晩の味噌汁の下準備〜カラスカレイ(アラスカ産・198円)の煮付けまで完成させ、
画室に入った。(本日からの作業は、着地点がおぼろげなものであったので、とにかくイマジネーションと集中力が要求された。
とにかく、画面にそれが定着出来る様、祈るような気持ちで作業に臨んだ。)

PM6:30 ひとまず一区切りつけ、立ち上がった私は、離れて絵を眺めた。・・パレットの方がきれいやないかいっ!と突っ込みを入れ、
濁ったバケツを洗面台に運び、思い立ってオザケンをかけた。(久しぶりに響くたオザケンの歌声は恐ろしいまでに前向きで、その
眩しさに私はカラオケに行きたくなった。) スピーカーからの勢いに助けられた私は、洗面台の掃除までやり、ニュースをつけて、
おひたしの小松菜を洗った。
「本日の諸作業」

第389話
2008年4月3日(木)
わんぼる君が取っている新聞の占いコーナーによれば、本日の私は「心に余裕なくなる日。せめて時間に余裕を。」とのこと
だった。その時間が無いから、余裕がないんじゃ!と思いつつも素直に受け止め、早め早めの行動をとったが、結局、今日も
地獄のタイムトライアルとなった運送業務だった。

どうにかこうにか任務を終え、買い物を済ませて部屋に帰った私は、北海道産のヒップホップ・ミュージックをかけ、ひいこら
言っている甘っちょろい自分を笑い飛ばして味噌汁を作った。感謝と共にわんぼるランチを頂き、晩の味噌汁の下準備まで終えて
作業に入った。

本日も、昨日に引き続き、絵の具と筆で記憶をすっ転がりながら、ああでもない、こうでもないと画面の中を掘り起こして行った。
正直、なかなか大変な作業だが、作品を通じて深いコミュニケーションの成立を願う私は、とにかく嘘が無い様、自問自答を続けた。

PM7:00 ひとまず今日は終いとし、何度見ても良くはならない絵から離れ、道具を洗い、ニュースを聞きながらおひたしの水菜を
洗った。今晩は、4匹298円で買ってきたウルメイワシを焼こうと思います。
2008年4月4日(金)
久しぶりに少し暖かくなった本日の大阪地方。涙の運送業務を完了した私は、どうにか無事に今週の業務を乗り越える事が出来た
安堵と喜びを午後の明るい世界に解き放ち、ペダルを漕ぎ出した。(帰り道、暖かな陽射しに開いた道端のカタバミの黄色い花が、
風に揺れていた。その微笑ましい様子に俺は頬をゆるめ、花達に手を振ってスーパーへと向かった。)

部屋に帰り、日の翳ったベランダに出た私は、束の間の自由に感謝と別れを告げ、制服の洗濯を開始し、速攻で味噌汁作って
わんぼるランチを頂いた。高校講座・物理を眺めながらほうじ茶飲んで立ち上がり、晩の味噌汁の下準備〜洗濯物干しまで
済ませて作業に入った。(本日は制作三日目とあって、記憶と絵の具と筆の距離が昨日までより少し近付いた気がして、比較的
楽しく作業を進める事が出来た。相変わらず表面上の出来不出来には、一喜一憂させられてしまう弱い私であったが、何とか
自分に忠実に行きたいです。)

PM7:00 今日のところは終わりとし、道具を片付け、水菜を洗った。今晩は、皮引きまでして貰って来た丸アジの刺身です。
「今日の私」

第390話
2008年4月5日(土)
PM3:40 北浜東のPタイル洗浄を無事終えた私は、地上に這い上がりチャリンコを漕ぎ出した。
土曜日午後の天神橋は、大川べりの桜並木を観に訪れた人達で賑わっていた。薄汚れた疲労をまとった私は、旋回する遊覧船
を横目に、そそくさと帰路に就いた。

部屋に帰りつき、シャワーを浴びて、くたびれた気持ちを洗い流し、わんぼる君が入れて下さったコーヒーを飲んだ。
頭の中に、昨日からの絵の続きがずっとあって、どうしても気になるので作業に入った。今日も、絵筆を用いて、画面上の塗膜と
記憶の対談となった。作品が上手く行っているかは正直分からなかったが、自問自答作業は楽しかった。

PM7:00 道具を片付け、わんぼる君が作って下さった晩ごはんを頂いた。私が昨日、家にあるのに勘違いして買ってきた分葱が
ホタルイカと“ぬた”になっていた。疲れのせいか、少し飲んだだけで酔っ払ってしまったが、心地よかった。
明日も頑張ろうと思う。
「本日の私」

第391話
2008年4月6日(日)
PM0:00 西梅田のPタイル洗浄を終えた私は、わんぼる君と連絡を取り、我が町に向かってペダルを漕ぎ出した。
環状線の高架下で落ち合った私たちは、お好み焼屋に入り、瓶ビール(中)を注文した。(アサヒスーパードライが出て来た。)
黄金にはじける泡をグラスに注ぎ、一週間の職務の完了を祝って乾杯した。

わんぼる君に愚痴や喜びを聞いて貰いながら、焼きそばと葱焼きをつついた。疲労がほろ酔いで和らいだ私は、コーヒーを飲みに
行こう!と誘った。

近くに自家焙煎のシュッとした店があったが、お好み焼きのにおいとほろ酔いに包まれた私には適さない様に思われたので、
すぐ近くの無防備な感じの店に入ってみた。(ホット2つと、あんみつを頼んだ。)
コーヒーは全然香りがしなかったけど、不思議とリラックスして、あんみつを食った。(あんこの上にキウイが2切れ乗っていて、
食べると、オバちゃんが剥いた味がした。)
二人で、すごいねと言いながら、わんぼる君がTSUTAYAで借りて来て観たというロッキー1の話を聞いた。
(14ラウンドで「もう立つな」とミッキーが言っても、ロッキーが立ち続けたのは、「俺が只のゴロツキでは無いと証明してやる」
と試合前日にエイドリアンに話していたからと聞いて泣きそうになったのは、僕らがビールで酔っていたせいではない思う。)

晩の買い物に向かうわんぼる君と別れ、一足先に帰った私は、作業着を洗濯し、風呂場に向かい、もっさりと伸びた頭を散髪した。
「今日の私」

第392話
2008年4月7日(月)
予報通りの雨となった本日の大阪地方。無事、運送業務〜買い物と済ませ、薄暗い部屋に帰った私は、灰色の空と雨水で
すっかり湿った心を、'90年代初頭にシアトルの毒大将が絞り出したネガティブ・サウンドで盛り上げ、味噌汁を作った。

感謝と共にわんぼるランチを頂き、4匹150円で買ってきた鳥取産の平子イワシを煮て、画室に篭もった。
今日も絵筆をとりながら、最高と最低の間を行ったり来たりの作業となった。

PM7:30 今日の目安まで到達した様に思えたので、ズルズルと行きそうな気持ちを切り替えてしまおうと道具を片付けた。
晩飯の準備を開始してからも途中の絵が気になったので、納豆を練りながら画面をにらんで明日の計画を立て、気持ちを
落ち着かせた。
「4/7」

第393話
2008年4月8日(火)
雨上がりの湿った街に冷えた風が吹いた本日の大阪地方。配達〜買い物と任務を終えて帰宅した私は、速攻でキャベツの味噌汁
を作り、わんぼるランチを頂いた。ほうじ茶飲んで一息入れ、晩の味噌汁の下準備までやって、いざ制作へと臨んだ。
本日は、当作品の実質的なヤマ場となっていた。とにかく、昨日まで通り、記憶と通信しながら、絵の具を置いていった。

(PM5:00 ひとまず小休止とし、作品から離れ、CDをかけた。GEISHA GIRLSの“ビー玉”をかけた。松ちゃん・浜ちゃんの
やさしい歌声に和みながらコーヒーを入れた。カフェインが血流に乗る頃、“炎のミーティング”の美しく、シリアスな旋律が
流れ始めた。私は、ボリュームを上げて立ち上がり、バケツの水を替えると、当作品の第4コーナーへ向かって突っ込んで行った。)


PM7:00 絵は、急に完成の雰囲気をかもし始めた。そして、一筆入れたら、描きかけでは無くなった。次の瞬間、わんぼる君が
部屋に帰って来た。途中は一切見せてなかったので、二人して完成を喜んだ。一気に制作から解放された私は、その明るい喜びの
到来を祝してミュージックをかけた。(フィッシュマンズの“WALKING IN THE RHYTHM”をいつもより大きな音でかけた。)

いつにも増して胸にビートが響く中、道具を洗った。洗面台の掃除までやって、晩メシの用意をするわんぼる君に合流し、刺身用に
3枚卸の皮引きまでして貰って来た平アジに包丁を入れた。テレビでは甲子園球場の阪神ー中日戦が始まっていた。
やっと現実に戻って来れた気がして、過剰にテレビに反応している様で恥ずかしかった。
「そして完成!」

第394話