「5/29」

第445話
不定期連載
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2008年5月29日(木)
予報通り昨夜からの雨で始まった本日の大阪地方。久しぶりにカッパを着込んでの配達業務となった。
一時は強かった雨も徐々に弱まり、昼前には、まぶしい日射しが戻った。湿った街はみるみる乾き、朝の天気は嘘の様に思えた。

諸任務を終え、無事帰宅した私は、風呂場に赴き、久々にカッパを洗った。薄汚れた街の空気が排水溝に流れて行くのを眺め
ながら、それらの主成分についての考察は止めておいた。
ビタビタと水が滴るカッパを脱水し、平和な光で満たされたベランダに干した。暖かい光と風を受け、浅い色へと変わって行く
カッパに、少し軽くなった気持ちでキャベツの味噌汁作って、わんぼるランチを頂いた。

台所を片付け、少し写真の整理をしてから、現在、完成している絵を並べた。現時点を確認し、一人会議状態で、次に向けての
エスキースをした。

今日は夕方から、わんぼる君と難波の百貨店で明日まで開かれているという千住博氏の作品展へ行く予定だ。何でも、夜光塗料で
描かれた青く発光する滝との事。先日観た“液晶絵画展”でも、日本的感性で独自のエンターテイメントを展開していた千住氏。
新しいアトラクションに臨む様なドキドキ感で楽しみです。
2008年5月30日(金)
週末金曜の北区の街を集金〜配達と奔走。いつの間にか、空は灰色の雲に覆われてしまっていた。
どうにか無事に任務を終え、スーパー〜図書館と巡り、少し調べ物をしてから帰宅した。灰色の空は鈍さを増していたが、
天気は夜まで持ちそうだったので、制服を洗濯しながら味噌汁を作った。

脱水が終わった洗濯物を干し終え、気分一新、ちゃぶ台につくと、テレビは幼児番組の時間になってしまっていた。チャンネルを
変え続け、結局、世界遺産に落ち着き、映し出されるアクロポリスの丘を眺めながらわんぼるランチを頂いた。

PM7:00 エスキースに一区切りつけ、ブルーハーブかけて、散らばった色鉛筆を拾い集め、炊飯を開始した。洗濯物は、ほぼ乾いて
いるがもうしばらく干しておこうと思う。今晩は、ツバスの刺身に小松菜のおひたし、味噌汁はじゃが芋・ミョウガです。


追伸:昨日の千住博展、真っ暗な会場に入ると、青白く浮かび上がる大きな滝で囲まれていて“ハーッ・・!!!”と喜びにも似た
   感情が湧き起こりました。思っていた以上に広い会場で、デパートという場所柄もあってか客層はおじさん、おばさんが
   多かったのですが、知らない人同志ではありますが、会場内には同じ体験を共有している喜びみたいなものが漂っていました。
   作品を構成する要素が大変ミニマルである事から、カッコイイ感じを想像していたのですが、実際の空間からは、もっと
   人間味のある、誠実さみたいな印象が心に伝わってきて、とてもやさしい気持ちになりました。
   帰宅後、思い出に購入してきたハガキをさっそくトイレに飾った私でした。 
「5/30」

第446話
2008年5月31日(土)
小雨が降ったり止んだりの天気となった5月最終日の大阪地方。北浜の床面洗浄作業を終えた私は、大型書店での立ち読み
を経て、無事帰宅。気温の上昇が加速させる頭髪のモッサリ感におさらばすべく、ハサミと櫛を手に風呂場へ向かった。

昨日のタモリの音楽番組の影響か、ハイロウズをかけて(我が家にクロマニヨンズが無いので)、モサモサ頭を切り刻んだ。
14曲入りのCDが13曲目に差し掛かる頃、気持ち的には爽やかであるが、客観的にはアウトなベリー・ショートヘアーが完成した。
(手が届かない後頭部はわんぼる君に切って頂きました。・・感謝!!)
毛だらけになった風呂場の掃除まで完了し達成感と爽快感を手に入れた私は、スピッツをかけて晩飯の準備に合流、ちゃぶ台に
食器を並べた。今日は泡立つ黄金の酒が飲みたいわ!
「さよなら5月」

第447話
2008年6月1日(日)
祝!! 丸一日休みとなった本日の私。悲しくも、結局、いつもの時間に目が覚めてしまった。まずは、朝メシ前に、音をたてぬ様
注意しつつ、パネル〜キャンバスの作成まで達成し、ザ・サンデー見ながら、わんぼる君と通常パターンに目玉焼きをプラスした
ゆとりある朝食を頂いた。

AM9:00 片付け〜部屋の掃除を完了した我々は、せっかくの休みということで、身支度をし、まぶしい光があふれる外へ出た。
何でも、京都の近美で、少し変わった趣向のルノワール展が催されているらしいのである。

透け透けの光が降り注ぐ京都駅コンコースを抜けた我々は、ひとまずポルタのイノダに入り、酸味の強いコーヒーで体内の細胞に
京都到着を知らせてから、市バス5番に乗り込み、京都会館・美術館前で下車した。

やはり、ルノワールの展覧会は、様々な年齢層に大人気で、午前中といえど、会場は沢山の人で一杯だった。いざ、展示室に入ると、
前ぶれ通り、通常の絵画のみを中心とした展示とは違っていて、氏の家族構成のプレゼンテーション〜子供達の肖像画に始まり、
壁面には、次男で映画監督になったジャン・ルノワールの映画が絵画と並列して映し出されていた。絵、一枚一枚と対峙すると
いうより、ルノワール氏の家族に向けられた視線や、親子の相互関係を観て行く様で、普段観るような展示とはまた違った印象だった。
絵画作品を、周辺の兼ね合いから観て行くせいか、普段、自分勝手な妄想で作品を観ている事を知った気がした。
(その許された思い込みが、鑑賞の面白味である場合もあるのかも知れないとも思った。)

混み合った会場を出て、常設展を観た。(河井寛次郎の造形物は今日も“キュキュッ”と気持ちの先っちょをつまむ様な魅力で
気持ち良かった。また、最後の方にあった岸田劉生の窓の外の樹木を描いた風景画には“クッ”と心を掴まれた。静かな、高い
集中力が、周辺に掛けられた作品とは、ちょっと違った引力を持っている様に感じた。)

一通り鑑賞を終え、日射しが増した外に出た我々は、昼メシどーしょーと言いながらヘラヘラと歩いた。結局、三条の篠田屋に
入り、中華そばと皿盛り(薄っぺらいカツにダシで伸ばしたカレーがかかったライス)を注文し、半分ずつ食った。

久しぶりにメディアショップを覗いて、へこへこ歩いて蛸薬師方面へ行ってみると、八千代舘(エロ映画館)が服屋に変わっていた。
別に八千代舘ファンだった訳では無いが、いかがわしくも庶民的な風情が好きだったので悲しかった。

別に何か買う訳でもなく、中古CD屋や雑貨店をまわりつつ、四条通りまで出て、COCON烏丸のカフェで抹茶のブラマンジェなるもの
とコーヒーで一休みした。阪急乗って大阪へ戻り、地元スーパーで晩の買い物をして帰った。
(今日は、300円で買ってきたツバスを“ちゃちゃっ”と煮て、ご飯は手抜きで冷凍の蓄えをチンして行こうと思う。)
「日曜の私」

第448話
2008年6月2日(月)
夏季用ユニフォームが薄ら寒く感じられた週明け月曜の大阪地方。持参していたゴアテックスを使用する事なく営業所への帰還を
果たした私は、数字の羅列に変換された本日の行動記録をマザーコンピューターへと転送し、その代価をタイムカードに打刻した。

衛星からの情報通り降り始めた雨の中、買い物を済ませて帰宅し、毎度の如く下世話な話題をふりまくテレビを横目に、どの
チャンネルを選定すればいいのか決められないまま平穏にわんぼるランチを頂いた。

PM6:40 無事、本日の目標作業であるキャンバス張り〜下地の一発目まで終えた私は、ニュースをつけ、鍋におひたしの水を張った。
何でも近畿地方、早くも梅雨入りとのこと。今晩は、水菜のおひたしに、トビウオの刺身、納豆、トマト、味噌汁は昨日、わんぼる君が
貰い受けた“モーウィ”という沖縄の瓜で行こうと思う。

(“モーウィ”・・茶色い小型のヘチマの様な愛らしい姿で、切ると薄黄緑色をしています。青春十八切符で旅に出た冬瓜の息子の
様な印象で、シャリシャリした食感と爽やかな香りは、切なささえ感じさせてくれます。)
「6月の私」

第449話
2008年6月3日(火)
一定のテンションを保った酸性雨が、私の無抵抗なゴアテックス・ジャンパーに浸透し続けた今朝の大阪シティ。何とか無事に、
割り振られた最後の荷物の受領印を拝領し、我が営業基地へ戻り出すと、空は明るみ、濡れた路面は、急速に水たまりとアスファルト
へと変わり始めた。サイド7並の精度で気象庁の予測通り移行していく天候に、最新のテクノロジーがもたらす感慨と恐怖の様なもの
を感じていると、心にあれだけ諦めを強いた雨は遠い記憶の向こう消えてしまっていた。

乾き始めた街の表面と雨が残した輪郭に、少し軽くなった気持ちで、買い物済ませて帰宅した。
わんぼるランチを頂き、晩の味噌汁の下準備〜サバ煮まで完成させて、いざ、制作に臨んだ。

PM6:40 予定の全工程を終了し、若干の不安と、これでいいんやという気持ちが混在したまま、当初の思い付きを信じて筆を洗った。
明日は、晴れ間が出るとのこと。 有難いっすわ・・。
「6/3」

第450話