「6/15」

第462話
不定期連載
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2008年6月15日(日)
PM0:30 東高麗橋〜北浜のビル清掃現場、階段室洗浄作業を終えた私は、我がホームタウンのTSUTAYAでわんぼる君と合流、
近くのイートイン・コーナーがあるパン屋で、“焼き立て!”の札が立てられていた、チーズとトマトを内包したプックリ
膨らんだパンと、鶏肉とハーブのピタパン・サンドを冷たいアイスコーヒーと共に心地良く平らげた。

上昇していく血糖値の中、わんぼる君からの誘いを受けた私は、吹田の博物館で開かれているという西村公朝先生の展覧会へ
と向かうべく、JR京都線へと乗り込んだ。

わんぼる君の案内により岸辺駅で下車、郊外型の風景が殺伐感を漂わせる国道の脇をしばし歩いた。案内に従い路地へ入ると、
思いのほか、情緒的な家並みとなり、常夜灯〜鳥居が現れ、大きな松並木となった。駅で見た地図に“吉志部神社”と書かれて
いたのを思い出し、これやな・・と思いながら少し嬉しくなって歩いた。
どうやら神社は、鎮守の森の中にあるらしく、博物館はその裏らしかった。見ると重要文化財の立て札があり、せっかくなので
参拝して行こうと注連縄見上げながら二つ目の鳥居をくぐり、手を洗った。

高まる気持ちを抑えつつ石段を昇り始めると、先に昇っていたわんぼる君の様子がどうも変なので、そんなに凄いのか!と
急いで昇った私は、愕然とした・・。目の前には立ち入り禁止のテープが張られ、拝殿は焼け焦げた無残な姿になっていたのだ・・。

あまりの惨状に言葉を無くしていると、隣にいた地元のオバチャンが「知らんかったん・・?」と火事があった事を教えてくれた。
テープの脇には神社の方からの告知が貼られていて、どうやら放火らしかった・・。
・・ようそんなことするわ・・私は悲しかった。

目の前の焼け焦げた拝殿は、辛うじて柱と梁で屋根の一部を支えていて、ほんの一部に、竹生島で観たのと同様の桃山様式と思しき
彩色が少しだけ残っていて、必死に建っているその姿はそれでも美しかった。

我々は、拍手を打つ気にはなれず、只々、手を合わせ石段を降りた。

何とも言いようの無い気持ちになりながら、ブナやナラが茂った森を歩いた。こんな広葉樹、なかなか生えてくれんで・・。
ため息ついて、森を抜けると博物館が現れた。わんぼる君によると、公朝先生は11年間ここの館長を勤めていらしたとの事だった。

先生の展示、学生時代の彫刻に始まり、晩年の菩薩〜羅漢に至るまで、どの作品にも一刀一刀先生のあたたかい思いが感じられて、
やさしい気持ちになりました。会場で流れていた晩年の羅漢像の制作の映像を観てから、観る実作品は感慨ひとしおでした。

いろんな思いを胸に少し疲れた我々は森を後にし、駅前喫茶で一休みして帰った。
2008年6月16日(月)
雨上がりの路面が朝日で白く光った週明け月曜の大阪地方。街の全てを透かす明るい光は、それらの影にまで透明度を与えていて、
営業所目指してチャリを漕いでいた私は、そのハイトーンな色彩に何年か前にわんぼる君と行った和歌山の海の色を思い出した。

結局、蒸し暑さとベタツキに覆われながら集金〜配達と任務を終え、スーパー〜パン屋、ドラッグ・ストア、酒屋、八百屋と巡り、
チャリのカゴ満杯で帰宅。昨日、TSUTAYAで借りてきた“ザ・フー”の力強いサウンドで達成感を祝い上げ、キャベツの味噌汁を
作った。

感謝と共に、わんぼるランチを頂き、晩の味噌汁の下準備〜ブリのあら煮を作った。(今日は大根に味がしみる事を夢見て、面倒
臭かったが、米の研ぎ汁で下茹でしてから煮てみた。加速度的にべっ甲色になって行く大根に達成感を感じた。)

無事諸任務を終え、現在完成している絵をわんぼるルームに並べさせて頂き(画室はグチャグチャな為)、現段階を確認しつつ、
今後の展開を一人会議し、帳面にそのプランを描き記した。

PM7:00 道具を片付け、台所に立ち、ニュースを聞きながらおひたしのツルムラサキを洗った。
「今日の私」

第463話
2008年6月17日(火)
日毎強まる日射しと上昇する気温の中、運送業務に勤しんだ私は、来るべき夏への覚悟を決めつつ“六甲おろし”を
口ずさみながらチャリンコ漕いで帰った。何と今日は、わんぼる君がお世話になっている写真スタジオの方々から、
甲子園球場での阪神ー楽天戦へのお招きを頂いたのである。

本日、お休みのわんぼる君が用意して用意してくださったライブ版のランチを頂き、一息ついて身支度をした我々は、
まずは野球観戦用の弁当を入手すべく、梅田の阪神百貨店に向かった。メインは甲子園のカレーで行きたいという事で、
カツサンドとサラダを買い、阪神電車に乗り込んだ。車内は、同じく観戦に向かうと思しき、グローブを持った少年や、
メガホンが突き出たバッグを膝に乗せた人々があちらこちらに確認出来、我々は笑みを浮かべながら電車に揺られた。

PM5:30 混み合う改札を抜け、リニューアル工事が進む甲子園外壁を見上げながら、一塁アルプス指定席入口をくぐった。
暗いコンクリートの場内に入り、応援団の太鼓が響く階段を昇った。2階まで昇り、アルプス席出口を抜けると、目の前には
西日に照らされた芝生とマウンド、それを取り囲む観客席と、響き渡る応援の大音量が一気に拡がり、否応なしにグウァッと
テンションが上がった。指定された座席を目指すと、スタジオの方々が手を振っていた。

試合は、幾度かのチャンスが到来しつつもなかなか得点に結びつず、1-2とリードされた状態で7回表を終え、逆転を願いつつ
ジェット風船を夜空に飛ばした。8回裏、ランナー1,2塁で代打高橋光信選手による二塁打で逆転。9回は藤川投手の10球にも
満たない素晴らしすぎる力投を目の当たりに見届け、勝利のジェット風船〜六甲おろしで幕を閉じた。
しかしながら、甲子園球場を支えている応援団の熱気、巨大な旗、黒い土、芝、コンクリート、愛に溢れた(?)野次は、どれも
決して美的とは言えないものばかりなのに、憧れても辿り着けない様な格好良さに今日も溢れていて、現実社会の持つ一筋縄
では行かない美しさに打ちのめされた私だった。
「6/17」

第464話
2008年6月18日(水)
灰色の雲に覆われ、蒸し暑い天気となった本日の大阪地方。ひいこらと配達業務を終えた私は、買い物済ませて無事帰宅。
感謝と共にわんぼるランチを頂き、次の作品の材料を買い求めるべく心斎橋の画材屋へチャリンコ漕いで向かった。
(途中、四ツ橋筋のマクドナルドで100円のアイスコーヒーを買ったら、夏バージョンなのか、水色にピカチュウが配された
爽やかな色彩のカップで出てきた。アイスコーヒーというよりコーラが似合う感じだったが、突き刺さったストローが良く
似合う夏らしい風情に嬉しくなった。)

画材屋での買い物を終え、再びペダル漕いで、坂井淑恵さんの近作展が開かれている京町堀のギャラリーゼロさんへ向かった。
会場は、90年代〜新作まで小さなサイズの作品で構成されていて、私が知らなかった頃の作品も観る事が出来、新鮮だった。
ファイルと合わせて観ていくと、坂井さんの独特なユーモアとやさしさを更に補完することが出来て楽しかった。新作の
やさしい色彩は、心の内側にしみこむ様な効き目でやっぱり良かった・・。

仕事を終えてきたわんぼる君としばし鑑賞に耽り、心に貼り付いた色彩をクッと抱きしめながら高森さんにご挨拶し、我々は、
混み合う画廊を後にした。(帰りは、肥後橋の商店街裏の気の抜けた感じの中華料理屋で、阪神ー楽天戦を眺めながら、紹興酒
を一杯だけ飲んで、トマトスライス、ソース焼きそば、八宝菜と食ってヘラヘラとペダル漕いで帰った。)
「本日の私」

第465話
2008年6月19日(木)
予報よりも早い雨で始まった今朝の大阪地方。無事、配達〜買い物と任務を終え帰宅。わんぼるランチを頂き、画室に向かった。

(本日から、昨日買い求めてきた材料を使って、またしても飛び道具的な工作作品の制作に入ったのだが、毎度の事ながら冗談
程度のエスキースから、何の疑いも持たないまま理想的な進行を思い描いて制作に踏み切った私は、いきなり材料が持つ特性に
直面し、手元の現実が発生させるブルーなアトモスフェアと闘いながらの作業初日となってしまった。結局、予定の半分しか
進める事が出来なかったが、ストレスを潜り抜けてこそ達成感があるだろうよと言い聞かせ、本日の作業を終えた。)

今晩は、2匹280円で買ってきた広島産の丸アジの刺身に、小松菜のおひたし、いつものニンジン・じゃが芋の味噌汁に甘長を
入れてみようと思う。
「6/19」

第466話