「7/6」

第483話
不定期連載
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2008年7月6日(日)
以前、申し込みをしていた京都・島原(西本願寺の西側)に残る日本唯一の揚屋(江戸期の料亭)建築・角屋の観覧日となった
本日。期待と興奮の為、浅い眠りを繰り返しながら朝を迎えてしまった私は、わんぼる君と“所さんの目がテン”見ながら、
わ君謹製のプラムのジャムをパンに塗り、そのすっぱい美味しさに意気揚々、身支度済ませて部屋を出た。

東海道線から、嵯峨野線と乗り換え、AM9:20 丹波口下車。約束の時間まで暫し、我々は大銀杏〜島原大門と散策し、AM10:00
開館間も無い角屋の暖簾をくぐった。

受付の奥、柱と梁がフレーミングする薄暗い視界の向こうには、坪庭の緑が映えていて、私は、一気に高まる胸を抑えつつ、
ロッカーに荷物を預けた。興奮の二階部分の見学は10:15からとなっていたので、まずは、一階の台所から見学を開始した。
視界に飛び込む、庫裡の様に高い天井に天窓、行き交う梁にイカしたデザインのカマド〜照明、神棚の応酬に、こりゃ大変やわ
と、慌てていると見学の時間となった。

ガイドの方に連れられ、みなでゾロゾロと階段を上がり、まずは二十三畳の“緞子の間”に案内された。広間の半分まで伸びる
長い違い棚と一枚板の床板にビビリつつ、いちいち組み方を変えつつも、広間に一貫した演出を施す障子の桟の軽やかな美しさ
にあきれ、見学はとんでもない幕開けとなった。
この後は、“御簾の間”で、一旦シワの入った和紙の上に金箔を押し、輝きにアクセントをつけた床壁に、カーブを描いた紫檀と、
虫食いを模した丸木のコンビネーションが冴える床の間にうなり、浅葱色の九条土と天井に張られた58枚の扇面がバチコーン!!!!
と視界に飛び込む、かの“扇の間”で快感にシビれ、円山応挙による襖絵の“馬の間”(すすで黒くなっていてよく観えなかった)〜
曲線を描く障子の桟と作者不詳の桃山テイストによる源氏絵が素晴らしい“檜垣の間”、ラストは壁〜床の間・桟と部屋中に螺鈿を
施した驚愕の“青貝の間”で、吐きそうな位の濃度のパンチを食らった。(この部屋、庭に面した障子には、当時輸入されたばかり
だったというギヤマンのガラスがはめられていて、その水飴の様な心地良い透明度から覗く庭の松の緑は、直接見るよりみずみずしく
みえた。)

さんざん打ちのめされて一階に下りた私は、さっきまであれほど興奮していた台所や坪庭に、ほっとしている己の淡白さに悲しさを
感じつつ、帳場や、刀掛け〜食器の数々を観て回り、毎日賑わっていたであろう当時の様子に思いを馳せた。

こうして気が済むまで角屋の見学を果たした我々は、花屋町通りのショーケースの巻き寿司がやさしく映える食堂に入り、ソーメン・
中華ソバ・サバ寿司を半分づつ食って、島原を後にした。

この後は、わんぼる君のリクエストで三年坂を歩き、四条の高島屋でハモの天ぷらと、おひたし用に明日葉、味噌汁にモロッコいんげん
買って阪急乗って帰った。(四条通りのスピーカーから流れていた祇園祭りの緩やかなサウンドが印象的だった。)
2008年7月7日(月)
引き続き蒸し暑い空気に覆われた週明け・月曜の大阪地方。洗濯したての制服が、秒速で汗ばんで行く悲しみをこらえ、
東奔西走。無事、買い物ツアーまで成し遂げて帰宅した。夏場で充分明るい自然光のもと、感謝と共にわんぼるランチを
頂き、ザルの様な身体に栄養をあてがい、晩飯の諸準備を完了させて作業の続きに入った。

PM7:00 実制作と事務作業を何とか目標地点まで完了。ピストルズかけて目の前の作業から強制的に頭を切り替え、炊飯を
開始した。今晩は、2匹200円で買ってきた刺身でも行けそうな鮮度のアジを塩焼きにするつもりだ。おひたしはモロヘイヤ、
味噌汁は、ニンジン・南瓜・モロッコいんげんである。
「7/7」

第484話
2008年7月8日(火)
鈍く重い空の下、巨大荷物の乱発で始まった本日の運送業務。途中、降り出した雨は、突然大粒の豪雨に変わり、薄手の
夏服は一瞬にして回復不能な状態にまで撃ち抜かれてしまった。勘弁してくれよと思いながら、変わりそうも無い状況に
腹をくくって東奔西走。何とか任務を完了し、買い物済ませて帰宅した。

結局、持ち帰って来たビショ濡れの制服を洗い、シャワー浴びて、わんぼるランチを頂いた。晩のカツオのタタキの煮切りと
味噌汁の下準備まで完了させ、作業開始。

PM8:00 どうにか本日の目標地点まで到達し、炊飯開始。おひたしのモロヘイヤを洗い、タタキ用にタマネギを水にさらした。
明日も頑張って行きたい。
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第485話
2008年7月9日(水)
出勤後、わんぼる君から、“台所の天井から水が漏っている”との知らせを受けた今朝の私。とりあえず管理人のばあさんへは
現況を伝え、洗面器で応急処置を施してあるので、私が帰るまでは大丈夫だろうとのことだった。

家賃・スペース〜通勤・生活環境、そして、当UJPの運営に必要な諸条件を満たしていた上、古さの割には、行き届いたケアに愛を
感じて借りるのを決めた我が家ではあるが、なんせ築30年近いマンションなので、あちこちガタが来ても全くおかしくないのである。
去年もトイレの電燈が付け根から取れたし・・。新陳代謝のある私だってガタガタなんやからねぇ・・。まぁ、形あるものいずれは
滅びる・・。諸行無常の響きありである。

と己に言い聞かせつつも、少し落ち着かない気持ちで運送業務〜買い物と終えて帰宅。管理人のばあさんに知らせ、水道屋の
おっさんの診察を受けた。我が家の天井〜上の階の水回りと診たおっさんは、こりゃ天井裏診んと分からんでという診断結果
を下した。

ばあさんの迅速な手配により、天井をぶち抜くべく港区の大工さんがすぐに来てくれることになり、私は急いでわんぼるランチ
を頂いた。そうこうしていると、脚立と工具を抱えた大工のオッチャンが到着。軽く、天井を見回したオッチャンは水道屋のおっさん
を天井裏へと送り込むべく取り付ける“点検口”なるハッチのサイズを早速、患部の脇にけがき、電気ドリルとゼット・ソーで湿った
木屑をほじくり出しながら天井から正方形を切り取った。

開口部からコンクリートを診た水道屋のおっさんによると、おそらく上の階の流し台の下の配管のどこかが漏っているので、まずは
上の流し台をはずす工事をしなければならないとの事。それまでは、天井裏のコンクリート下に洗面器を置き、伝ってくる水滴を
受ける事になった。まぁ、天井板に浸み続けるのを受けるよりはマシである。

道具を片付け、玄関に向かうみなさんに御礼を申した私は、ため息と、とりあえずの安心を胸に、ホコリと木屑で荒れた我がキッチン・
スタジアムを掃除し、ハイロウズかけて悲しみを勇気に転換しつつ、米を研いで、味噌汁の下準備〜サバ煮と作った。

見上げると、ハッチの向こうには、思いの他頑強そうなコンクリートが見えていて、疲れと共に嬉しさも感じた私だった。
「7/9」

第486話
2008年7月10日(木)
ヒート・アップする気温が屋外労働者のみならず、生きとし生ける者全てに一歩進んだ地獄を見せた本日の大阪地方。
脳を襲う朦朧とした空気を払いつつ、あてがわれた集金〜配達と任務を終えた私は、燃焼がゴリゴリと食い込む身体を
思考半止まりの頭で操ってスーパーへ向った。

食材の色彩に励まされながら、無事、買い物を終えて帰宅。天井裏の洗面器に溜まった水を捨て、ベランダの洗濯物を
よけながら飢えた植木に水をあげて、エアコン・シャワー・わんぼるランチと移行した。

こうして感謝の底から這い上がった私は、晩の下準備を終え、画室に向い、昨日のブランクを取り戻すべく作業に入った。

PM7:20 本日の目標地点まで到達し、少し救われた気分になれた私は、ニュースをつけ、おひたしのモロヘイヤを洗った。
今晩は、2匹398で買ってきた広島産の丸アジの刺身である。味噌汁は、ニンジン・じゃが芋に元気な緑色の甘長を加え、
気持ちに弾みをつけようと思う。
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第487話
「7/11」

第488話
2008年7月11日(金)
本日も蒸し暑い空気に覆われた大阪地方。無事、運送業務〜買い物と終え、我がマンションに帰ると上の階では水漏れ工事が
始まっている様で、ゴリゴリ・ギュルギュルと電気ドリルの音が響いていた。

急いで買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞い、シャワーを浴びると、ピンポンが鳴り、先日の水道屋のおっさんが現れた。
上の階の術式は終わったそうで、あとはウチの天井裏から今しがた開通した穴に新ルートの水道管を通せば終了との事だった。

味噌汁作るにも台所が使えない私は、とりあえず制服を洗濯しながら工事の終了を待った。さすがプロフェッショナルのおっさんの
動作は速く、電燈を手に脚立を昇ると、すぐに問題の水道管を手前から切断、新しい継ぎ手をくっ付け、新ルートを開通させると、
上見てきますわと接着剤のにおいを残して出て行った。

洗濯物を干していると、おっさんが戻って来て、もう大丈夫っすわとのことだった。コップに冷蔵庫のリンゴジュースを注ぎ、
差し出すと、おっさんは一気に飲み干し、道具を片付け去っていった。暫くは、コンクリートに残った水が出るので、点検口は
開けておいた方が良いとのことだった。とりあえず、天井裏に洗面器を置き、水漏れ終焉の安堵感を醸し始めたコンクリートを
眺めながら、飛び散った破片を掃除し、わんぼるランチを用意した。

味噌汁を作る段階になって、キャベツを買って来るのを忘れた事に気が付いた。仕方ないので冷蔵庫にあったタマネギの残りを
入れた。今晩は、わんぼる君が飲み会でいないので、晩メシは具沢山味噌汁(ハマチの切り身・ニンジン・じゃが芋・みょうが)と
冷凍ご飯で済ますつもりだ。おひたしは、モロヘイヤ・100円である。