「7/12」

第489話
不定期連載
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2008年7月12日(土)
PM0:00 本日の床面洗浄作業を終えた私は、チャリンコのカゴに汗臭く湿った作業着を放り込み、北浜の現場を後にした。

“クアッ”と暑い日射しの下、ペダルを漕ぎ進み、高架下の涼やかな本屋でわんぼる君と合流。イート・イン併設のパン屋へ
赴き、二人共に、“お好きなパンを一つお選び下さい”のパスタランチを食うことにした。(私は、厚みに惹かれ、厚焼き卵の
サンドイッチなるものと豚とトマトのパスタを、わんぼる君は、アボガド・サラダのサンドに、アサリのパスタを選んだ。)

冷たいアイス・コーヒーを吸い込み、ようやく鮮明な意識を取り戻した私は、ワン・ステップ遅れて店内の涼しさと明るさを
感知し、運ばれてきたパスタの色彩に喜んだ。結局、二人して、テーブルの上の4種類を思うがまま網羅し、疲労の淵から
元気玉を拾い上げた私は、“タワーレコード行こうや”と誘い、店を出た。

気が済むまで試聴〜立ち読みとまわり、心にビタミンを補充した我々は、湿度の高い空気が強い日射しで白く発光する風景に
さっき試聴機で聴いた様々なメロディを重ねながらスーパーへ向い、買い物して帰った。

今日は、鮮明な輝きの北海道産の生サンマが299円というロー・プライスで出ていたので、三枚卸しの皮引きまでやって貰って
来た。おひたしはモロヘイヤ、味噌汁にはニンジン・じゃが芋・オクラを入れようと思う。鮮やかな命、確かと頂きます!!!
2008年7月13日(日)
念願の水無瀬神宮のお茶室“燈心亭”の観覧日となった本日。いそいそと起き上がった我々は、休日感アップを目論んで焼いた
目玉焼きを、ハチミツと共にパンに載せ、“所さんの目がテン”見ながら頂いた。

JRから阪急京都線と乗り継ぎ、AM9:00、かの“山崎の合戦”が繰り広げられた天王山を北に眺めつつ、水無瀬駅下車。阪急電車の
高架に添いながら、我々は目的地目指して歩き始めた。

大阪から30分程度の移動だった割には、そこには旅情を感じさせる商店街〜家並み、田畑に緑の山といった風景が広がっていて、
我々は、思いの他、嬉しくなって歩いた。教えていただいた道順に従い、突き当りを左に曲がると、道端には、“西国街道”の
道標が立っていて、この情緒の根拠はこれだったのかと納得した。

現れた大きな石碑と鳥居に高揚しつつ、門をくぐった我々は、まずは手を洗った。水無瀬川と淀川の間に位置するこの場所は、
元々は鎌倉時代に後鳥羽上皇の別荘があった所だそうで、地下水の恵まれた境内の湧き水は名水百選にも選ばれているとの事で
沢山の人がポリタンクを持って並んでいた。

ひとまず参拝を終え、落ち着いた我々は、社務所のグッズにソワソワしながらお茶室拝観の手続きを完了。白の袴が凛々しい
宮司さんに導かれ拝殿の脇の木戸からお庭へと案内されると、木々の間に“グオッ”と突き出た茅葺の屋根が現れた。
ウオッ・・!!とびびりながら近付くと、その屋根の下には、スキッと細い垂直・水平のラインが納まっていた。この感動の原因は、
如何にと、眼の前に在る出来事を眺めると、この“燈心亭”、お茶室やのに縁台があるやないか・・!! またこの屋根とのバランスが
ちょっと変で、そこがまたイイのである・・。やるわ・・とうなりつつ、宮司さんの解説を受けながら順を追って観て行った。

この燈心亭、寛永の頃、後水尾上皇の好みにより作られたものとのことで、侘び数寄の草庵茶室とは、ある意味対照的な遊び心で
多様な素材が用いられていて、縁台に縁取られた明るい三畳の茶室の天井は、格子が組まれ、その中には竹をはじめ、萩やヨシと
いった細い素材が並んで張ってあった。その構成の細やかさとミニチュアばりの情報量の多さのせいか、その空間には三畳とは
思えない広がりと華やぎがあった。(この席名は、天井に用いられた素材が灯心に使われていた事に由来しているとのことだった。)

宮司さんによると、この草庵建築と貴族社会の出会いから数奇屋建築が始まったとのことだった。ストイックな自然観で、内へ内へと
コミュニケーションを差し迫ってきた利休居士の空間が、このような形で数奇屋建築へと展開して行ったのは、何より時代背景があるの
だろうが、随所にちりばめられた工夫と楽しさで、それとはまた違った感動を与えてくれる燈心亭のまわりを我々は、ぐるぐると回り、
そのインプレッションを胸に木戸を閉じ、それらを反芻しながら水無瀬神宮をあとにした。


この後は、島本から山崎へJRで移動、駅前でメンチカツのランチを食ってから、久しぶりに大山崎山荘美術館へ行ってみた。
(何も考えずに行った展示だったが、大山崎の町に一ヶ月間滞在して制作したという、セリーナ・オウ氏による地元の方々を撮影
した写真作品が、なかなか、氏の人柄を偲ばせるナイスな印象だったので、我々は、町の各所で同時開催中という展示まで巡り、
心地良い疲れにウトウトしながら各駅停車に揺られて帰った。)

今晩は、日射しでやられた身体を励ますべく、298円買ってきたウルメイワシをオリーブ・オイルと玉ネギ、パセリでホイル焼きに
しようと思う。味噌汁はニンジン・カボチャにゴーヤを入れて、まぶしかった日曜日を締めくくりたい。
「いざ燈心亭へ」

第490話
2008年7月14日(月)
本日もアッツイ、アッツイ天気に見舞われた週明け月曜の大阪の街。洗い立ての爽快な制服が、情け容赦なく汗にまみれて行く
悲しみを堪え東奔西走。今日は、水漏れでやられた我が家の天井をクロス屋さんが見に来る事になっていたので、昼は営業所近く
の定食屋で、オムソバ・ワカメ酢・ごはん中・味噌汁を食らい、ダッシュで買い物済ませて帰った。

あたふたと食材を冷蔵庫に仕舞い、シャワーを浴びていると、クロス屋さんがやって来た。えらい早いなと、急いでパンツ穿いて
台所へ案内。脚立に上ったおっちゃんは、痛んだ箇所をビリビリとめくり、寸法を測ると、同じやつ入ったら電話するわと、めくった
クロスの端切れに俺の電話番号を書くと帰って行った。

めっちゃ早かったなと思いながら俺は、床やシンクに散らばった破れカスを掃除し、剥がされたクロスの下から現れたテクスチャーを
眺めつつ、晩の味噌汁用に買ってきたカボチャの種を取り、設定した本日の目標地点目指して作業を開始した。

今晩は、2匹298円のトビウオの刺身に、納豆、トマト、おひたしはツルムラサキで、味噌汁はニンジン・カボチャ・ゴーヤで行きます。
「7/14」

第491話
2008年7月15日(火)
暑さを表す言葉がインフレ状態となってしまった大阪の街を、集金〜配達、集荷と巡り、ゴリッと食い込む疲労と引き換えに
任務完了。毎度の如く、食材もとめてスーパーへ向かった。

原油高による全国一斉休漁と言われていた本日。心配していた鮮魚コーナーに特別変わった様子は見られず、ひとまず安心した私は、
刺身でも別段問題無さそうな立派なサイズの平アジ・佐賀産(398円)を三枚卸しの皮引きまでして貰い、ツルムラサキ、冬瓜と共に
購入。サービスの氷と、帽子、ハンドタオルで大切な食材をガードし、日陰〜日陰と選びながらペダル漕いで帰った。

部屋に戻り、汗ダクのこのままでは、何も出来ん!! とベッタベタの衣類を脱ぎ捨て洗濯開始。植木に水を遣り、シャワーを浴びて、
ようやく思考回路を取り戻した私は、空調の効いた部屋で、濃い目に作ったキャベツの味噌汁をすすり、わんぼるランチを頂いた。
結局、熱いほうじ茶を飲むと、また汗ダクになってしまったが、もうええわ・・と観念し、晩の下準備〜作業と移行した。

(ここのところ、展示前の為、どうしても事務的な作業が中心となっていて、どうも心の中に澱のよなものが溜まって行くのが自覚
されて落ち着かないが、何とか乗り切ろうと思う。)
「7/15」

第492話
2008年7月16日(水)
今日も暑かった大阪の街。配達〜買い物と終え、へろへろと帰宅した私は、わんぼるランチを有難く頂き、198円で買ってきた
千葉産のサバの煮付けまで完成させ、再び部屋を出た。

昨日に引き続き、展示準備の一環で、本日は電車で心斎橋へと赴き、カラーコピー〜画材屋と巡った。

PM7:40 無事、予定していた作業を完了し帰宅。炊飯を開始し、モロヘイヤを洗った。味噌汁は、ニンジン・じゃが芋・冬瓜である。
トマトと焼酎で元気出して、明日も頑張って行きたい。
「7/16」

第493話
2008年7月17日(木)
“スコーン”と抜けた空気にバチバチの太陽を浴びながら、アスファルトの上を運送業務に走り回った俺は、今日になって
コンビニのおばちゃんの会話で梅雨明けを知ったのだった。

スーパー〜米屋と巡ると、南の空には白銀の入道雲が輝いていて、裸で海に飛び込みたい気分になった私は、街や道端を
レンズ越しにぐっと眺め、街中を覆う突き抜けたまばゆさを暗箱の中にお裾分けして頂き、少しだけ落ち着きを取り戻して
部屋に帰った。

わんぼるランチ〜家事〜作業と時間に追われながら遂行。PM7:00 わんぼる君帰宅の知らせを受け、とっ散らかった部屋を
そのままに、炊飯開始。魚焼きグリルを点火し、280円で買って来た徳島産の丸アジに塩を擦り込んだ。今晩、味噌汁は、
ニン・かぼ・冬瓜、おひたしはチンゲン菜である。焼酎・塩焼き・大根おろしで明日に向かって元気出して行きたい。
「7/17」

第494話