「大阪1年目、夏以降」
第5回 |
'99年7月 かくして、造園屋さんを辞めてしまった私は、再度、
作品制作に臨むべく、大阪ミナミの氷屋さんで、
氷の配達〜加工のバイトに就きました。
軽トラのハンドルを握り、潜入する心斎橋〜難波周辺の
バック・ヤードの日常は、良くも悪くもその磁場特有の
バイブレィションで、それまで大阪の街と表面的にしか
接する事が無かった私は、否応なしにそれを体感する事が出来ました。
平日の午後および、日・祝出勤となりましたが、何より
作品制作の時間が確保出来ましたし、この仕事から望む街の
質感が、私は嫌いではありませんでした。
(が、何しろメンバー交代が激しく、その心労に耐えられなかった
私は、3年半の勤務の末、現在の運送屋とビル清掃のスタイルに
転職しました。)
当時、制作の方は、相変わらず、とりとめの無い日常風景を写真で
記録していましたが、どうも、撮るだけで作品と言えるのだろうかという
疑問が頭をもたげ始め、
(・・つまりは、写真を作品にしていく力量が無かったという事でしょう・・。)
初心に立ち返り、画材を用いての日常の描写、
物質への置換を試み始めました。
「つぶれたペットボトル」
1999年 紙 鉛筆 色鉛筆 油性ペン 29.7×42cm
当時、学生時代の友人達に近況報告を兼ねて、無理やり
送りつけていたカラーコピーを使って作ったA4サイズの小冊子
(写真とスケッチで構成されている)からの抜粋です。
(3冊程作りました。)
「バリケード1」
2000年 オレンジ色の模造紙 両面テープ
3×121×808cm
街でよく見るへたったバリケードを、1/1スケールで
模造紙を使って作りました。へたった感じは良かった
のですが、一見、何なのか分からない物になってしま
いました。
「バリケード2」
2000年 オレンジ色の模造紙 両面テープ 針金
左の写真の作品に、針金を心材にして自立させて
みました。バリケードらしくはなったのですが、
模造紙の構造自体で成立していない事が、どうも、
後ろめたく、作品としてはイケナイ感じになってしまい
ました。
「俺の現実」
2002年 綿布 水性塗料 アクリル絵具 小ネジ
3×121×80.8cm
上の2点の失敗を踏まえ、布で原型を作り、リアルな彩色
を施せば、一目でバリケードと分かるのではと思い作りま
した。
この制作で、学生時代、(株)遊部ロイロ工芸で養われた
エイジングの塗装技術が生かされました。
「西区交差点の風景」
2000年 紙 不透明水彩絵具 72.8×103cm
「西大橋 空き地の草」
2001年 紙 不透明水彩絵具 72.8×103cm
当時住んでいた近所の風景です。写真に撮るだけでは達成感が得にくいので、撮ってきた写真を絵に描きました。
叙情性を出す為、人物は、手が加えられていますが、基本的には写真をそのまま描きました。